私のコーヒー好きは両親譲り。
特に母は「コーヒーに砂糖を入れるなんて邪道」と言う人で、私も小学校の高学年にはブラックで飲むのは平気だった。
母はインスタントも嫌いで、わざわざデパートのコーヒー売場で買っていたし、ここ数年は「ここの豆が美味しいのよ」とお気に入りのお店を見つけて、コンパクトな白のグラインダーで豆から挽いて淹れてくれた。
私も帰省の時には、必ずお気に入りのお店の豆をお土産にしていた。
母の好きな、少し酸味のある豆をいつも選んで。
そんな母が、今年の桜の開花を待たずに亡くなった。
あまりにも突然だった。
私は形見に、母が使っていた白のグラインダーを引き取った。
あと、私がお土産に買った、未開封のコーヒー豆も。
きっと母は勿体なくて開けなかったのかな…母らしいな。
単身赴任が長かった父は、インスタントコーヒーでも問題無いと言う。
でも父が帰ってきた時、母は必ず毎朝豆を挽いて、父にコーヒーを淹れていた。
朝だけじゃない、昼食後、お土産のお菓子を食べる時、焼物集めが趣味だった母のお気に入りのカップで出してくれた。
私の結婚した夫も大のコーヒー好きで、母と同じように豆を挽いて淹れてくれる。
少しこだわりが強い、我が家のコーヒー担当。
でもそろそろ、私もコーヒー好きの夫に手ほどきしてもらって、母のように大切な人のためにコーヒーを淹れようかな。
その時は、白のグラインダーで豆を挽こう。
ほぞ