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Untitled - よっぴー

コーヒーはほっとできるもの。

職場、家庭、外出先、色々なシチュエーションでコーヒーは私たちに優しい時間を与えてくれます。その優しさはきっと、母の温かなぬくもりのようなもの。

 

15 年以上前、私が中学生だった頃の話。

思春期だったその当時、私は母に時々反抗していました。でも週末は必ず一緒にランチをして百貨店へ行く。

 

食後のコーヒーを飲んだ時、毎回とても穏やかな気持ちになりました。甘いデザートとコーヒーがあれば、単純な私はすぐに笑顔になる。コーヒーには、何か素敵な力があるのだと思った。

 

中学 3 年生の春休み、前日まで一緒にコーヒーとスイーツを楽しんでいた母が、救急車で病院へ運ばれました。


その前に行った子宮筋腫の手術が残念ながら失敗してしまったのです。

後に主治医から聞いた話によると、助かるとは思わなかったとのこと。奇跡でした。

 

2 人の弟は当時まだ小学生。

 

弟の名札や上靴に名前を書き、家事をこなし、合間で自分の受験勉強をする日々。


今となっては大変だったなと客観的に思うのだけど、当時はただ一生懸命だった。

 

そんな時も、いつも私の側にはコーヒーがありました。ミルクと砂糖をたくさん入れて飲むコーヒー。母と一緒に楽しく飲むものではなく、一人で飲むコーヒー。

 

元々甘党の私だったけど、思いっきり甘くして飲んでいました。ブラックで飲むと、気持ちまで暗くなってしまうから。

 

そして今も、私はよく母と食事に行きます。一緒には住んでいないけれど、1 時間ちょっとで会える距離。

 

もちろん食後にはスイーツとコーヒーを。
ブラックで飲めるようになりました。
甘さはきっと母の愛情が埋めてくれているのだと思う。
大好きな人との時間をさらに温めてくれるコーヒー。
コーヒーには、やっぱり魔法をかけてくれる素敵な力があるのだと思う。
コーヒーには、やっぱり魔法をかけてくれる素敵な力がある」
このひと言がすべてを言い表していますね。

藤原智美 ( 第 107 回芥川賞受賞作家)

フクオカコーヒーフェスティバル実行委員会

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